売れる文章は『語彙力』で決まる？

売れる文章は『語彙力』で決まる。そう信じて、必死に類語辞典をめくったり、キャッチーな言い回しをストックしていませんか？

残念ながら、その努力はほとんど無意味です。

結論から言うと、本当に人の心を動かし、商品を売る言葉の源泉は、あなたの"外側"にはありません。全ては、あなたの"内側"に眠っています。

あなたの文章が、誰の心にも届かず、なぜか浅く、虚しく空を切る最大の理由。それは、他人の庭から借りてきた、枯れた花を飾るような「外側のテクニック」に頼っているからです。

【書く筋トレ】売れる文章は「内なる言葉」を掘り起こすことでしか生まれない

「なんか、文章が浅いんだよな…」「言葉が陳腐で、ありきたりになってしまう…」

もしあなたがこんな壁にぶつかっているなら、それは文章の才能がないからではありません。単に、自分の内側に眠る、言葉の"水源"を掘り当てる作業を怠っているだけなのです。

『「言葉にできる」は武器になる。』でも提唱されている、「内なる言葉」と向き合う習慣。まだ言葉になる前の、感情や思考の"マグマ"に触れること。

これこそが、小手先のテクニックを根こそぎ吹き飛ばす、最強の「書く筋トレ」になります。

まず、意識的に一人になる時間を作ってください。そして、様々な状況で自分が何を感じ、何を考えているのか、その心の声を丁寧に"盗み聞き"する。

「嬉しい」「悲しい」といった雑なラベルで終わらせず、その感情が持つ独特の"質感"や"温度"まで、じっと観察するのです。

次に、捉えた感情に「どんな風に？」と、虫眼鏡を当てるように自問します。

例えば「嬉しい」なら、「飛び上がりたいほど嬉しいのか？」「じんわりと胸が温かくなる嬉しいのか？」「少し誇らしい気持ちが混じった嬉しいなのか？」。

この訓練を繰り返すことで、あなたの感情を表す言葉の引き出し、つまり「内なる言葉の語彙力」が爆発的に増えていきます。

その感情は、一体どこから来たのか？「なぜ、そう感じるのか？」というドリルで、自分の心の奥深くを掘り進めてください。

あなたの過去の経験や、大切にしている価値観と結びつける。この深掘り作業が、あなたの言葉に誰にも真似できない「深み」と「納得感」を与えます。

通勤中の車窓から見える景色、ランチで食べたパスタの味、湯船に浸かった瞬間の安堵感…

日常のふとした瞬間に浮かぶ心の動きを、「あ、今こう感じたな」と意識的にキャッチし、具体的な言葉に翻訳する。日常の全てが、あなたの表現力を鍛えるジムに変わります。

それは、このトレーニングが、セールスライティングにおける最も重要な3つの力、つまり「共感力」「独自性」「本質」を、根本から覚醒させるからです。

自分の喜び、怒り、不安、劣等感といった感情の機微を、解像度高く理解できるようになると、不思議なことに、顧客の感情も同じように深く、具体的に想像できるようになります。

ターゲットの心に"刺さる"言葉とは、結局のところ、あなた自身が自分の心の中から見つけ出した「本物の感情の欠片」なのです。自分の心を理解することなしに、他人の心をハッキングすることなど、到底できません。

類語辞典から借りてきた言葉は、誰にでも使える綺麗な「既製品」です。しかし、あなたの内側から絞り出された言葉は、たとえ不器用でも、生々しい手触り感と、あなただけの"体温"を持った「一点物」になります。

人は、完璧に整えられた言葉よりも、不器用でも魂のこもった「本物の言葉」に心を動かされるのです。

多くの書き手は、「型」や「テクニック」から文章を組み立てようとします。これは「型に言葉を流し込む」作業であり、本質からズレている。

しかし、内なる言葉を起点にすれば、「伝えたい本質的なメッセージ」が先に生まれ、それを表現するために最適な言葉を後から選ぶ、という自然な順番になります。これにより、表層的でない、読者の人生に影響を与えるほどの「本質的なメッセージ」を紡ぎ出せるようになるのです。

もしあなたが「売れる文章を書きたい」と本気で思うなら、小手先の表現テクニックを学ぶ前に、まずこの「内なる言葉」と向き合うトレーニングを始めてみてください。

地味で、即効性がないように見えるかもしれません。しかし、これがあなたの文章に「魂」を吹き込み、人を動かす「言葉の力」を根本から底上げする、唯一にして最強の近道です。

単なる語彙力ではない。「感情を的確に捉える語彙力」を鍛えること。

あなたの内側には、まだ誰にも見つかっていない言葉のダイヤモンドが眠っています。それを掘り起こす作業こそが、あなたがその他大勢の書き手から抜け出す、唯一の道です。

のぼりんブログ/売れる文章は『語彙力』で決まる？