脱毛サロン最大手『ミュゼ』の破産から学ぶ、危険な成長モデルの罠

なぜミュゼは倒産してしまったのか?様々な理由がありますが、結論から言うと、原因は極めてシンプルです。
未来の売上を"燃料"にして、現在の成長エンジンを無理やり回す、いわば"ドーピング"のような急成長モデルに、その全てが詰まっています。
そして、この"破綻の方程式"は、あなたが今やっているビジネスにも潜む、極めて危険なワナでもあります。

なぜ、彼らは破綻するしかなかったのか?

ミュゼが採用していたのは、「顧客から受け取った前受金(未来のサービス料)を、そのまま現在の広告費に全額ベットする」という手法です。
このモデル、一見すると最強に見える。
手元に入ってきた現金を、そのまま広告に突っ込む。当たれば、顧客数は爆発的に増え、売上は青天井に伸びていく。この"ハイリターン"の魔力に、多くの経営者は取り憑かれます。
しかし、このモデルには、たった一つの、しかし致命的な欠陥が存在する。
それは、広告の費用対効果(CPA)が悪化した瞬間に、全てが崩壊するという点です。もっと詳しく話しましょう。

崩壊までのフェーズ

フェーズ1:黄金期

CPAが安い時期。広告を打てば打つほど儲かる、まさにイージーゲーム。未来の売上という名の"燃料"が無限にあるように錯覚し、店舗を増やし、従業員を雇い、固定費をどんどん膨らませていく。

フェーズ2:陰り

競合の参入や、広告媒体のアルゴリズム変更で、CPAが徐々に高騰し始める。「あれ、最近利益が残らないな…」と感じ始めるが、急成長の麻薬から抜け出せず、「もっと広告を打てば大丈夫」と、さらに未来の売上を燃料タンクに注ぎ込む。

フェーズ3:崩壊

そして、CPAがついに損益分岐点を超える。 広告を打てば打つほど、赤字が垂れ流されるという、悪夢の逆転現象が発生します。
ここでブレーキを踏めばいい?いや、もう遅い。
広告を止めて新規顧客の獲得(=未来の売上の前借り)を止めると、既に抱えた何万人もの顧客へのサービス提供(人件費、家賃)という、膨れ上がった固定費が払えなくなる。
アクセルを踏んでも地獄、ブレーキを踏んでも地獄。 こうして、未来の売上を食い尽くした成長エンジンは完全に停止し、後には莫大な固定費と負債の残骸だけが残るのです。
これは、ミュゼだけの話ではありません。
高額なスクール、パーソナルジム、サブスク型のSaaS… "前受金"を扱う全てのビジネスが、このワナにハマる可能性があります。

あなたのビジネスは大丈夫ですか?

キャッシュフローを見て、「前受金」を単純な「利益」と勘違いしていないか?その現金を、未来の顧客への"負債"ではなく、目先の成長のための"軍資金"として、安易に使い込んでいないか?
勘違いしないでほしいのが、この「前受金ブースト」は、ビジネスの初期フェーズ、つまりゼロから一気に市場シェアを奪いに行く段階では、極めて強力な戦略になり得ます。
しかし、問題なのは、多くの経営者が、その"初期ブースト"の成功体験から抜け出せなくなることだ。
事業が安定期に入り、CPAが高騰し、固定費が膨れ上がっているにもかかわらず、創業期と同じ感覚で未来の売上を燃やし続けてしまう。
これが、急成長した企業が瓦解していく典型的なパターンです。
だからこそ、今、自分のビジネスがどのステージにいるのかを冷静に見極める必要があります。
あなたは今、市場をこじ開けるために
✅"未来からの借金"というロケット燃料を燃やすべきステージなのか?
それとも、、、
✅安定した巡航速度を保つために、"現在地で生み出した利益"という燃費の良いエンジンに切り替えるべきステージなのか?
アクセルを踏み続けるタイミングと、ギアチェンジするタイミング。これを見誤った先に待っているのは、壮絶なクラッシュだけです。自分の会社の"現在地"を、今一度、真剣に見つめ直してみましょう。